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冬の海

・ 海へ行った。 昔、友人と語り明かした懐かしい海ヘ――― 冷え切ったハンドルを握りアクセルを踏み込んでみる。 慣れ親しんだ海岸沿いを、 高校生の頃よく行った海へと向かった。 毎年、暑くなるとテントを担いで向かった海へ。 激しく打ち寄せる波の音。 頬…

・ 夜空に月が出ていた。 丸く霞んでぼやけた月は、どうした訳かいつもより近くに見える。 視力が低下したせいだろうか。あるいはアルコールのせいかも知れない。その昔───水面に映った月を取ろうとして、 溺れ死んだ詩人がいるという。 馬鹿げた話だが、 今…

ギムレット

・ 久しぶりにギムレットを飲む。ショート・カクテルの中で好きなカクテルを挙げよと言われれば、ギムレットはその一つだ。 『ギムレットには早すぎる』とは、レイモンド・チャンドラーの小説『長いお別れ』の中に出てくる有名な台詞。 近年のドライ嗜好でフ…

懐かしい香り

・ 横断歩道で信号待ちをしていると、 懐かしい匂いがした。 軽い花の芳香が漂う香水の香り。 俺の前に立っているOL風の女性から、それは届いていた。 いつかどこかで―――それもひどく身近で嗅いだ匂いだった。 思い出せない。 が、それは確かに、いつかの…

グラン・マルニエ

・ 女性雑誌は面白いと思う。 今から六年程前まで俺は、 サラリーマンとバーテンダーの二束の草鞋を履く生活を送っていた。 女性誌を読むようになったのは、 その当時、社内の女の子がいつも読んでいたのを、 何気に読んでからだと思う。 俺はあまりファッシ…